週刊ネコ通信

日記とか備忘録とか。

バルトークのブルガリアのリズム

なぜかずっと「ブルガリアのリズム」を(3+3+2)/8拍子そのものだと思い込んでいた(ミクロコスモスにその拍子の楽曲があり、しかも解説でそのように書かれているのを見た覚えがあったからだ)が全然違った。

 

変拍子の楽曲に対するピアノ指導についての一考察 ─バルトークブルガリアン・リズムによる 6 つの舞曲》を中心として─】

http://repo.kyoto-wu.ac.jp/dspace/bitstream/11173/111/1/0080_009_003.pdf

 

この論文はブルガリアのリズムに特化していてわかりやすいが、核心となる部分は「バルトーク音楽論選」(ちくま学芸文庫)に収録されているバルトーク自身の言葉に依るもの。

バルトーク音楽論選 (ちくま学芸文庫)

バルトーク音楽論選 (ちくま学芸文庫)

 

 

複雑な変拍子がごく自然にブルガリアないしその他の東欧諸国で歌われていた(と書かれていれば信じるしかない)とのことだが、この「片足を引きずって」いるかのリズムが何故生まれたかに関する考察はいまいちよくわからない。バルトーク自身も注意不足で採譜の譜割りを間違えたと告白しているほどだから原音はそれほどまでに独特のリズムだったのだろうし、起源に関する研究は自分以外の者に任せるつもりだったのかもしれない。

 

バルトーク音楽論選」の前半ではバルトークが無調音楽をこき下ろし、代わりにストラヴィンスキードビュッシーの音楽に対する姿勢を認めるかのような発言をしている文章が読めたのでそれだけでも興味深かった。ドビュッシーワーグナー的な体制から脱出するために自身のルーツ?とも言える古いフランス音楽に遡る必要があった、という指摘も読んでいて楽しい。凄いのは、そうした方法論をバルトークが自身に厳格に適用し、労の多い緻密なフィールドワークを実施して原初的な状態の民族音楽の中に活路を見出そうと悪戦苦闘したというところだと思う。

後半の講義録では民族音楽に関するペンタトニックからの解釈が譜例付きでそれなりのページを割いて掲載されてこれもかなりためになった。