週刊ネコ通信

日記とか備忘録とか。

2021年のこと

2021年は色々転機となった年だったのでまとめて文章に残しておきたいな、と思い始めてから早数ヶ月、なんと既に2022年4月になってしまった。しかしあまり気にせずに書いていく…

 

転機といっても生活環境が大きく変わったとかそういうことではなく、聞く音楽がちょっと変化した、みたいなことである。

 

具体的にいつ頃から、というのはよくわからないのだが、2021年の春頃、矢代秋雄の「古典組曲」を聞いたあたりから嗜好が変容した気がする。

矢代秋雄は寡作なうえに早逝してしまったため一般にはあまり有名ではないと思うが、武満・三善らと並んで日本の現代音楽のレジェンドである。この「古典組曲」は、矢代の初期の作品ということもあり後の時代のものほど難解ではないし、フランス風の色彩感がとてもよい。かつ、勢いで推進していくのではなく、じわじわと風景が変わっていくところがとてもよい、と感じたのを覚えている。1つのモチーフを大事に育てていく、というか。譜面を追いかけていると、ますますそんな気がしてくる。

矢代は文章も面白く、日常の出来事をエッセイとして記したり、自作の解説文も遺したりしており、譜面付きのそれを見ると、やっぱり真摯に真剣に音に向き合っていたのだなあと感心してしまう。

 

そうしているうちに、吉村弘がいいなと思い始めた。以前から聞いてはいたのだが、『Wet Land』にたまたまYouTubeで出会ってからますます好きになった。吉村弘は相当に再評価されていますが、これは再発されてないんですよね…

これは、もちろん環境音楽などの視点から聞かれるべき作品ではあるのだが、自分の中では何故だか先の矢代とどこか地続きな気がしている。同じ日本人作家だから、というような理由ではなく、、、

ほか、『flora』『MUSIC FOR NINE POST CARDS』などもよいですね。

吉村弘は著作も数点出しているので、「都市の音」などを入手して読んでみたが、なにか奇抜なことをして独自のものを生み出していくのではなく、身の回りの事柄を見つめ直してヒントを得ていく、という視点の堅実さに唸ってしまった。そんなに特異な内容が書かれているわけではないんですが、その蓄積の強度がすごいと思わされるわけです。

 

 

 

最近のも少し。

渡邊琢磨「Last Afternoon」。2021年リリース。某所の上半期ベストに挙げられており購入してみましたが、まあこれがよい。アルバムジャケからすると牧歌的内容なのかな…と一瞬思ったが、全然そうではなく、一種の決意感に溢れた音像が続きます。

 

Devendra Banhart, Noah Georgeson『Refuge』。2021年リリース。アンビエント。休みの日の午後に聞いた。

turntokyo.com

 

Picnic『Picnic』。2021年リリース。オーストラリアのdaisartというレーベルからのリリースだがdaisartがどういうレーベルなのか、ネット上ではいまいち情報が見つけられない。

しかしよい。前後左右を考えず、その場その場の響きだけに集中するタイプの音楽だと思う。

 

LI YILEI『之 / OF』。2021年リリース。中国の方です。これはなんとなくTwitterとかでも話題になってた気がします。結構Lo-fiなんですが聞いてて心地よいです。

 

Rainforest Spiritual Enslavement『Flying Fish Ambience』。2021年リリース。ダークドローンですが気色悪さはないです。じめじめしてるけど……

 

Okkyung Lee『Yeo-Neun』。これは2020年リリース。韓国の方です。いわゆるモダンクラシカルなアンサンブルで、残響の消え方に聞き入ってしまう。静かな曲調のわりに、想像を裏切るフレーズが随所に飛び込んで来るので聞いていて飽きない、非常に動的な響き。

 

CV & JAB『Landscape Architecture』。2020年リリース。なんだかよくわからないがよい。

 

r beny『full blossom of the evening』。2016年リリースの1stですがフィジカルが最近出たので買いました。モジュラーシンセ主体で制作していると思われ、無限に引き伸ばされた音像がよい。

rbeny.bandcamp.com

 

4/4追記。

ALABASTER DEPLUME『To Cy & Lee: Instrumentals Vol. 1』。2020年リリース。生楽器主体のモダンなアンサンブルです。独特な残響処理による音色の移り変わりを聴きました。

 

最後に一番聴いたのを。

ann annie『cordillera』。2018年リリース。ann annieはオレゴンあたりの方で、結構若そうな方です。

しかしbandcampで聞くよりYouTubeで観た方が良さが伝わるかと思う。

www.youtube.com

この人の動画はどれも全部良いです。これなんかもかなりお気に入り。

www.youtube.com

しかも投稿していくほどに洗練されて行っており、直近の動画はもう仙人みたいな域です。ほんとすごい。モジュラーっていいな…と思い始めたきっかけでもあります。

www.youtube.com

 

 

まあでも、こうしてまとめて振り返ってみると、どれも似通った音楽であり(もちろん良い意味で)、非常に大雑把に「アンビエント」として括れてしまう類だと思う。でも似てる箇所ではなく、違いを聞き取ることに意味があり、それが楽しいと思えた一年だった。

何が違うのか、言語化できない部分で自分の中で整理して、その日の気分で聞く盤を選ぶ、というのはやはり大変な贅沢なのだと再認識した次第です^^