週刊ネコ通信

日記とか備忘録とか。

2019_08_11

ジョビンの『As Praias Desertas』を坂本龍一、ジャケス・モレレンバウム、パウラ・モレレンバウムが演奏したもの。『無人の浜辺』というタイトルである。ジョビンが最初期に書いた曲らしく、そのためなのか「Tom Jobim」名義でクレジットされていたりする。

坂本龍一は2000年前後にジョビン研究にかなり熱を上げており、その集大成ともいえるのが2001年のアルバム「Casa」である(柳樂光隆氏のブラジル音楽30選でも次点を獲得している名盤)。アルバム1曲目を飾り、また別のライブアルバム「Live in Tokyo 2001」でも1曲目に配置するなど思い入れのある曲のようである。

ジョビン研究とイーノ研究が2000年代前半の坂本の音楽性を決定づけたのは間違いなく、その観点からも非常に興味深く聴ける。これらを完全に消化して00年代後半はAlva Notoとかとのコラボレーションに移行するのも興味深い(話は逸れるが、いわゆる「イーノ・コード」(長三和音の上で完全四度が偶然鳴る和声)って未だに音楽界で十分に咀嚼されて無くて、発展のしがいがあるなあという夢があるよね…)。

 

坂本はジャケス・モレレンバウムとは「1996」の頃からのタッグであり、何かのインタビューで「これほどまで厳しくチェロを弾ける人間は他にいない」といった趣旨のことを話していた気がする。そう、ジャケスは滅茶苦茶チェロが上手い……大変強固なアンサンブルが出来る職人である。そこに着目して演奏を聴くべきである。

 

ごく個人的な話をすると、このアルバムを買ったのは高校生の頃。大多数の人々と同じように、私はenergy flowのような坂本龍一像に若干の熱を上げており(今思い出すと何とも恥ずかしい)、ブックオフ坂本龍一のアルバムがあったことから喜んで買ってみたところ正直よくわからない内容だった(=期待していたサカモトの音とは随分乖離していた)ので戸惑ったことを覚えている。大学生になって聴き直してみたらかなり良かったのでたまに人に薦めたりもしていたが、あんまり反応が無かったのが悲しかったなあ…と思い出すなど。

 

最近ブラジル音楽がにわかに流行っている(気がする)ので色々聴いてみたりするのだが、自分の中ではこの坂本龍一とモレレンバウムのフィルターを通して聞くのが今のところ一番快適だなと思う次第です。